青春の孤島にて

この季節 駆け抜けるべき

天使は泣かない


昨日は1時まで起きていたけど、今日は8時までに起きようと、アラームをかけて寝た。7時47分、爆音アラームで目が覚めた。まだ眠い、けどもう8時になる。何とか二度寝しないようにアラームを止め、目覚まし代わりにスマホをいじった。習慣になったJ-webの嵐のページにアクセスして「あらしみくじ」を引く。今日は潤くんか。ちゃんとおみくじを意識してあるコメントに納得して、何となくアーティストリストを見ていると、あの文字が目に入った。考えるより先にその文字をタップしていた。昨日、句会のページを読んだ時に彼のページを覗いたのは、まだ心のどこかで嘘であって欲しいと思っていたからだろう。当然のように彼のページがあって、何でもないように最終回と書かれていた。そうか、何度かしか訪れなかったこのページは終わってしまうのか。半分意地で彼の言葉をそう受け止めた。そして私は今日も懲りずにページを開いた。まずアーティスト写真が変わっていたことに寝起きのパンチを喰らい、下にスクロールすると当然のように彼のページは存在していなかった。そうか、もういないんだ。

今だってあの日を覚えている。お風呂上がりに途中から観ていたら、彼らが最初に出てきて、翔さんとどんな話をするのかなと楽しみにしていた。だけど彼らは翔さんとの会話より、視聴者への報告を選んだらしい。私は意味のわからない言葉を発する彼より、いつも完璧な顔しか見せない彼がボロボロになりながら言葉を足していく姿の方が観ていられなかった。彼らが登場してからハケて行くまでは、さながら小さな嵐が通り過ぎて行くようだった。突然の嵐に慌てふためく人、嵐の中にいながらどうでもいいと通り過ぎるのを待つ人、通り過ぎた跡を見て嵐に気づく人、そもそも嵐があったことすら知らない人。私はその嵐の中で、ただただ最初に口を開いた彼がいつものように「ウソウソカワウソ〜!」とおどけるのを待っていた。スベった彼に3人が突っ込むのを待っていた。彼らはおどけもせず突っ込みもせず、出番を終えた。

更新された彼らのページをそっと閉じ、8時になる前に起き出して顔を洗う。薄着で寝たから少し寒い。コーヒーを作りながら頑なに理由を話さないままいなくなった彼を何とかこの頭で理解したくて、私は彼の経歴を勝手に作り上げるという愚行に出た。彼はきっと人間になりたかった天使なのだ。30年だけ人間でいられる契約で人間になった彼はとても美しく、とても優しいまま事務所に入り、デビューした。ずっとこのままでいたい、みんなそう思っていたけど契約終了の時はすぐそこ。突然消えるなんて出来ない優しい彼は半年前にいなくなることを教えてくれた。今にも崩れそうな仲間の横で、自分自身のことなのに淡々と事を述べる彼は別世界の人のようだった。最後の生放送で涙を流す仲間を笑うけど、最後なのは自分の方なのだ。泣くのは彼であって欲しかった。けれどあの日からこれまで、彼は泣かなかった。泣いたのは、私だった。強く気高く美しいまま泣かない彼の代わりに泣いた。だけど代わりになんてなれなかった。ただただ悲しい自分のために私は泣いた。自分のために泣ける私と、人のために泣かない彼。ああ、彼は天使だったんだ。そんな何年使ったマグカップにインスタントコーヒーと砂糖とポットのお湯を適当に入れるような粗雑な解釈で、私は少し楽になれた。どんなに自分勝手であろうと、最後まで語らなかった彼をなかったことに出来ない私は出来上がった粗雑なコーヒーにミルクを垂らす。苦々しい中に染み行く白のように、天使の存在を私の中に落とし込んだ。どんなに苦くても溶け込むミルクのような優しさだった。そんな人だった。少し砂糖が多かったかな。それも彼の優しさのようで、わざと苦いななんて思い込んでみた。苦いは苦いし、甘いは甘かった。

8時ちょうどにテレビをつけ、金曜日の楽しみを観ながらこれを書いている。スタジオと共演者が変わっていたけれど、私の大好きな人は変わらずテレビの中にいた。昨日のラジオを思い出す。よく思わない人のため息が聞こえてきたから、1人で笑ってやった。急に嵐の『できるだけ』を思い出して、痛みを感じる。甘すぎるコーヒーを飲んで変わることを選択した彼の優しさに救われるけど、私は痛くてもいい。今救って欲しいのは私じゃなくて、たくさんの人を救ってきた彼だ。これからは自分を愛してくれたたくさんの人の優しさに救われて欲しい。

泣かなかった、天使へ。
また私が泣きそうだ。